2013年5月6日(月)

新聞掲載

朝日新聞に紹介されました。

愛あふれ笑顔の「表現家」

書の作品集出版 西﨑 亮さん(24)

立ったまま筆を持ち、腰の高さほどある机の上の半紙に穂先を下ろす。一気に「楽」の文字を書き上げると、少し照れくさそうに笑いながら、傍らの母親真弓さん(51)とハイタッチした。
自閉症で重度の知的障害がある。人と会話をすることはできないが、字を書くことが大好きだ。「表現家」として今年1月、書の作品集「CALLIGRAPHY BOOK」を自費出版した。
 
「愛」や「笑」など24作品を載せた。それぞれに真弓さんの詩が添えられている。例えば「愛」の作品。「誰でも自分一人では 生きていけない まるごと受け止めてくれる 愛があればそれだけで 生きていける」
 
2 歳のとき、自閉症と診断された。脳に障害があり、「誰かの助けがないと生いくことができない」と医師から告知された。
 
3 歳のころから、外で見た看板の文字や車のナンバープレート、テレビに映った歌詞を暗記し、油性ペンで熱心に紙に書くようになった。
 
小学3 年で書道を始め、中学生になるとNPO 法人主催の書や絵のワークショップに参加した。支援学校を卒業後の2011年3月、岡山市内で個展を開いた。来場したたちから「癒やされる」「元気をもらった」などと一言かけてもらった。
 
地元の薬局店の経営者も作品を気に入り、薬の手帳のザインに採用してくれた。さらに口コミで評判が広まり今年2月には、東京であった物産展の岡山県ブースの看板の字を書く大役も担った。
 
今、平日は瀬戸内市にある福祉サービス事業所に通っていて、休日に筆を執る。自宅近くの空き地にある、小さプレハブが「書斎」だ。書をする日は朝からずっとうれしそう。自らプレハブに向かい、1 時間半ほど集中して枚も書き続ける。
 
作品集を手に取り、笑顔で見つめていることが多い。真弓さんは「多くの人に声をかけていただいたのがきっかけで作品集ができた。本人の励みになっている。」1月、3月と続けて個展を開いた。もっと活躍の揚を広げていくもりだ。(吉村治彦)

にしざき・りょう まゆみ
亮さんは1988 年生まれ。県立東備支援学校の中学部・高等部を卒業し、現在は瀬戸内市の福祉サービス事業所「せとうち旭川荘」に通う。障害者らによる「スペシャルオリンピックス」のボウリング競技にも参加している。真弓さんは61年生まれ。塾で英語講師を務めている。